喫茶店の珈琲 (P)

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coffee
私の母は、私が生まれたぐらいの頃から喫茶店をしていて、
母の淹れた珈琲の味こそが、珈琲だと思っていた。

今になって思うけれど、母の淹れる珈琲は薄い。

私が珈琲を商品として提供する職業に就いた時、日に何件もの珈琲屋さんを訪れ
珈琲についての本を読み、珈琲の淹れ方を試行錯誤し、私はいっぱしの珈琲通の気分になっていた。

そんな私だから、母の淹れる珈琲についても、口を出さずにはいられず
母は、そんな私の、いちいちを嫌がった。

30年近く母は、毎日同じ珈琲を淹れ、その珈琲を飲みにお客さんが足を運んでくれる。
喫茶店と言うのは、美味しい珈琲を飲む場所と言うよりも、
その場所でしか味わえない、空間や時間、話題などが主である事を、後になって知る。

今になって思う。
美味しい珈琲屋さんは、たくさんある。
けれど、話を聞いて欲しくて、かけこむ「いつもの喫茶店」の場合
何杯もおかわりする場合であったなら、母の珈琲は、何杯でも飲めるな、と。

ちょっと寄った京都の六曜社さんで、珈琲を飲みながら、
六曜社さんに、いつもの日課として通っていると見られるお客さんの姿と、
レトロな店内をぐるりと見渡して、
それぞれの役目としてのお店があるのだと、ふと思った1日だった。

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(ピーポー)

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金沢を中心に、あちらこちらに、ゆらりふらりと現れて活動しております。 饅頭と名乗りながら珈琲とパンを基調としたイラストを描き どこか耳を疑うようなタイトルと、2度見しちゃうようなイラスト達を Tシャツ、トートバッグ、手ぬぐいなどのアイテムに転写して 饅頭VERY MUCHの世界観を繰り広げております。 パンを中心にした生活を送り、珈琲を愛する日々から生まれた仲間たちです。 感謝の気持ちと、肉厚な見た目の調和から生まれたのが 「饅頭VERY MUCH」です